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珍耳袋


1997年─――。オレはあの夏のことをきっと忘れないだろう。
ノーブラ&タンクトップで誘惑してくる後輩の女の子、輝く太陽、白い砂浜。
そして、楽しいはずの合宿を恐怖の思い出に染め上げた、あの惨劇のことを。





1997年の9月。
世間一般ではとっくに夏休みが終了している時期に、
オレたちは千葉県九十九里浜の地にたどり着いた。
大学生の夏は長い。
8月が終わっても“前半”が過ぎたにすぎなかったのだ。

貸しコテージ村は、広大な土地にいくつかのコテージが建っており、
バーベキューも、テニスも、カラオケもできるという夢のような施設。
普段だったらとても賑やかなところなのだろうが、
オフシーズンに入った村はほとんど人気もなく、静寂が支配していた。

管理人は1人。
60歳を過ぎた老人だったが、客商売とは思えないほど態度が横柄だ。
それどころか、我々を疎ましく思っている節もあった。

「何か変な感じがしないか?」
神社の1人息子である先輩がつぶやいた。
実はオレも同じことを考えていた。
言葉にはうまく表せないが、
“何かが起きる”
そんな漠然とした不安のような、予感めいた感覚を覚えていたのだ。
ふいにあるモノが視界に入った。

 それは、焼却炉だった。

おそらくコテージ村で出た可燃物を燃やすためのものだろう。
大きさは、小学校などで使うのと同じくらい。
見慣れているはずのソレにオレは何かを感じずにはいられなかった。


「なーに、やってるんですか、先輩!」
突如、ボーイッシュな女の子後輩に背中をバチンと叩かれ、我に返った。
彼女の健康的な小麦色の肌と
タンクトップからでも分かる小ぶりな胸の膨らみを見ると、
ムクムクムクと何かが膨れ上がり、不安のことは頭からなくなってしまった。
かくして、少し遅れたオレたちの常夏のバカンスは始まったのだ。

バーベキュー、飲み会、カラオケ、飲み会、水泳、飲み会、
近くの散策、飲み会、テニス、飲み会、桃太郎電鉄、飲み会、
徹夜、飲み会、海辺の散策、飲み会、ジャグジー、飲み会…。

なんだか飲んでばかりのような気がするが、
楽しい時間は過ぎていき、気がつけば最終日の前夜を迎えることになった。

「花火をやらないか?」
誰かが言った。

そういえば初日に誰かが勢いで「買おう!」と提案し、
シーズンオフで投売りされていた商店中の花火を買い占めていたのだ。

「こりゃ、相当遊ばないと消費できないぜ」
「遊び倒すしかないだろ、娯楽のボルテージは火力で決まるんだぜ?」
「なんだよ。それはww」

かくして、我々は九十九里海岸を目指すこととなった。
ぬめっとした空気が肌にまとわりつく。
吹く風がまったくない。
昨日まであれほど聞こえていたひぐらしも
この夜にかぎってはなぜかまったく鳴かなかった。
空はうっすらと雲が立ち込めはじめ、月と星を覆い隠そうとしていた。

「先輩、今日って何の日か知ってますか?」
ボーイッシュな女の子が話しかけてくる。
「いや、知らないけど」
「なんかあるらしいですよ、神社の掲示板に書いてありました」
「何があるの?」
「そこ、忘れちゃったンですよねーww」

海岸に着いた。
ところが海辺には街灯のひとつもない。真っ暗だ。

「まあ、花火をつければ明るくなるだろ?」

オレたちは、使いやすいように花火をパッケージから取り出すと、
砂浜のいたるところに置いた。

「よし、火をつけよう!」

ところが何度やっても火がうまくつかない。
いつの間にか風が吹きはじめ、不思議なことに火が消えてしまうのだ。
みんながイライラとしはじめていると…

 ポッ ポッ ポッ ポッ

「あ、雨だ」

振り出した雨はすぐに大粒となり、オレたちに容赦なく降りかかる。
オレたちは暗闇の中、手探りでそこいらに散らばった花火をまとめ、
雨宿りのできる海の家まで逃げ込んだ。

ひさしが狭いのでみんなが密着した状態で、雨具合を様子見る。
オレの左腕には、やわらかい円状の肉のふくらみが押し付けられている。
(この暗闇だったら過失と言い張れるだろう)
邪な考えをもったオレは突起部分を予想されるあたりを想定して
なでるように触ってみることにした。

「をふっん」

男のあえぎ声がした。この声は巨漢の先輩のものだ。
オレの目論みは最悪のカタチで失敗した。

オレたちはタクシーを呼び、そのままコテージ村に帰ることとなった。
雨はその夜、いつまでも降り続いた。


翌日。
昨日の雨はウソのように晴れ上がっていたが、オレたちの心は晴れなかった。
なぜならチェックアウトぎりぎりまで惰眠をむさぼったせいで
ハイスピードでゴミの片付けや布団たたみをするハメになっていたからだ。

「食材が冷蔵庫にあまっているけどどうする?」
「アイスだったら食べちまえよ」
「酒があまっているけどどうする?」
「瓶ものは持ち帰って、缶に残ったビールは捨てろよ」
「オレのパンツが1つ足りないんだけど」
「知らねえよ」
「昨日の花火、しけちまって使えないけどどうする?」
「じゃあゴミですね」

なんとか時間内にすべてを終え、オレたちは焼却炉に可燃ごみを置き、
管理棟で支払いを済ませた。
タクシーを数台呼んで、それに乗って帰路につく。

ブロロロロ…

「先輩、楽しかったですね」
後部座席に座りながらボーイッシュな後輩がオレを見上げながら問う。
「ああ、そうだね」
今度こそホンモノを左腕に押し付けられながら、オレは心から頷いた。


その時である!


  ドーーーーーーーーーーーーーンッ!!


突如、大地を揺らす轟音が鳴り響き、
オレたちは車内にいながらも、地を這う大きな震動を感じた。

「な、なんだ、ありゃ」
タクシーの運転手のじっちゃんがバックミラーを見て戦慄していた。
オレはすぐに背後を確認しようとした。
すると隣に座っていた先輩が怒鳴った。

「見るな、絶対に、見ちゃいけない!」

視界の隅に映った彼の腕には鳥肌が…。
そして、背後を見据える先輩は見たことがない表情をしていた。

一体、彼は何を見たのだろうか?

何 を 見 れ ば、あ ん な 表 情 に な る の だ ろ う。



後日。
先輩から話を聞くことが出来た。

離れていくコテージ村を見ながら、先輩も感慨にふけっていたらしい。
すると、地を揺るがす轟音とともに、あの「爆発」が起きたという。
それは本当に爆発としかいいようがない、
西部警察とかでよく見る爆発とまったく同じだったとか。

何が爆発したのか。
その疑問は、空に吹っ飛んでいた「あるモノ」のおかげで解けた。

空を舞っていたモノ。
それは、煙突だった。
爆発したのは、あの焼却炉だったのだ!

なぜ?
その時、先輩は懺悔の気持ちに襲われたという。

“俺は、とりかえしのつかないことを、してしまった!”

先輩がやったこと。
それは、ゴミを焼却炉に棄てた行為。
しかしそこに問題があった。

先輩「昨日の花火、しけちまって使えないけどどうする?」
オレ「じゃあゴミですね」

先輩(花火は燃えるのか?燃えないのか?
   ???。
   燃えるな、じゃあ可燃ゴミだ)

その結果。


  ドーーーーーーーーーーーーーンッ!!


黒煙をもうもうと出すかたわら、
ヒュルヒュルヒュル~、パンパーンといくつかの花火が鳴っていたとか。


1ヵ月後。
そのコテージ村のホームページを見ると
禁止事項がひとつ追加されていた。

  “花火を焼却炉に入れないこと”

オレたちは、ゴミの分別の神髄を思い知ったのだった。

そのコテージ村にオレたちが出禁になったのは言うまでもない。



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【珍耳袋】 ほんとは怖い夏の花火の話

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