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タイトル


“人間賛歌”をテーマにしたストーリーはスクウェア作品最高の完成度!





こんばんわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士です。

私はストーリー重視のRPGがキライである。というのも、ゲームである以上「プレイするもの」であり、深いメッセージ性を発信することなど出来ないと思っているからだ。あのメタルギアソリッドですら、メッセージを強めることで説教臭い感じになってしまう。ゲームにはゲームの身の丈にあったストーリーがちょうどいい、そんな風に考えていた。だが、それは間違いだった。私はとんでもないメッセージ性の強い傑作を不覚にも見過ごしていた。今回、記事を書くにあたって10時間ほどプレイしてみて気がついた。それが、今回発掘したスクウェアのRPG『魔界塔士Sa?Ga』である。




 ゲームボーイ専用として“生”を受けた宿命
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『魔界塔士Sa?Ga』は、スクウェアのゲームボーイ参入第一弾作品。一度に出せる色は4色だけ、一画面に表示できる文字数も少なく、かつ容量も少ない。広大な世界を冒険することがRPGの代名詞だった時代、「ゲームボーイでどこまでやれるか?」という点で注目を集めていた。それに対し、スクウェアが出した解答は明快。広大なマップデータを入れられないなら、小さなマップ世界を複数出す。こうして、世界の中心に建つ?魔界塔?を軸に、階層世界で構築される独特の世界観が生まれた。ちなみに、この階層世界という設定は、実はサガのテーマと密接に関連した“仕掛け”となっている。

他にも、性能と成長の仕方がまったく異なるキャラクター(人間、エスパー、モンスター)によるパーティ編成、そこから生じるさまざまな攻略手法といった複数回プレイを前提にしたゲームデザイン。武器に回数制限を設けることで発生するリミット感、従来の中世世界RPGをあざ笑うかのような武器の数々(波動砲、核弾頭、サブマシンガン、飛び膝蹴りなど)。主人公キャラやモンスターのグラフィックを街の住民に使いまわすなど、ハード性能の限界を感じさせながらも、さまざまなエッジの利いた取り組みでプレーヤーを飽きさせない。あらゆる意味でエポックメイキングな作品ではあるが、そのへんに関しては割愛させていただく。今回はストーリーにしぼって講義を進めていこう。


 これが、魔界塔士Sa?Gaの世界だ!
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塔

世界の真ん中に建つ?塔?は楽園へと通じているという。
はるかな楽園を夢見て、
多くの者たちが塔の秘密へ挑んでいった。
だが、彼らの運命を知るものはいない。
そして今、また、ひとり――。



◆ 魔界塔01階 大陸世界
魔界塔スタート地点といえる世界は、剣の王、盾の王、鎧の王の三人がその覇権をめぐって争いをつづける群雄割拠の時代。英雄の街の中心に建つ?英雄の像?に、それぞれの王たちが持つ、剣、盾、鎧を戻したとき、塔への道が開かれる。しかしそれは、四天王のひとり玄武の罠だった。

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◆ 魔界塔03階 楽園
ここは、働かなくても、何もしなくても、生きていけるという世界。果たしてここが本当に楽園なのだろうか?何者かが人間の自堕落な様を笑っているような悪意が感じられる。

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◆ 魔界塔04階 地獄
そこは、悪魔たちに支配された人間たちの世界。日々拷問に耐え続けている人々は口をそろえて言う。「この生活に耐えれば、いつか楽園に連れて行ってもらえると言われた」。一体、誰に?

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◆ 魔界塔05階 海洋世界
世界の大半が海に覆われている世界。この世界をもともと支配していた竜王は、四天王のひとり青龍にその座を奪われてしまったらしい。大海原を航海するための手段、そして敵の本拠地である海底に行くための手段を手に入れなければならない。

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◆ 魔界塔07階 意志をもった石像の世界
この世界には、数体の石像しか存在しない。だが、彼らはかつて生き物であったような痕跡があり、魔界塔士たちに意志を託すもの、アイテムを授けるなど好意的。しかし、ある程度時間が経過すると、さきほどの行為を完全てに忘れたかのように攻撃をしかけてくる。

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◆ 魔界塔09階 宿泊施設の世界
世界すべてが巨大な宿屋。そこには、多くの魔界塔士たちが傷つき、ベッドの上でで再起のときを待っている。なぜ、このような世界が存在するのか?ここの住民たちは知ろうともしない。

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◆ 魔界塔10階 空中世界
大空に浮かぶ雲の上に街が築かれている世界。ここでは、四天王のひとり白虎がいま尚、塔の封印に関わるクリスタルを入手できないでいた。クリスタルのカギといわれているジャンヌとミレイユの姉妹を中心とするレシスタンスと白虎軍の戦いは、今、熾烈をきわめる。

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◆ 魔界塔11階 宝箱の世界
まるで魔界塔士をサポートするかのように、宝箱が置いてある。


◆ 魔界塔12階 乾いた大地の世界
タコたちが住むこの世界では、もうずっと長い間、雨が降っていないという。タコたちはわずかな水を求めて泉に集まるがそれもあと少ししかない。このまま彼らは干上がってしまうのか?

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◆ 魔界塔13階 水没寸前の世界
少年が湖にゴミを入れたところ水詰まりを起こし、世界全体が水没寸前となっている。ちょうど12階の世界の上に位置するこの世界。何か関連があるのだろうか?

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◆ 魔界塔16階 都市世界
廃墟と化したこの世界では軍隊はすでに存在しない。替わりに戦いをつづけているのは暴走族の一団だった。世界を周遊し常に攻撃をしかけてくる四天王のひとり朱雀にはあらゆる攻撃が通用しない。そのバリアを中和する兵器イレイザー99を完成させるため、魔界塔士たちは荒廃した街を行く。

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◆ 魔界塔18階 カンパニーの世界
階層世界において販売されているさまざまなアイテム?武器を扱っている商社だけが存在する世界。四天王の頂点に君臨するアシュラによって、業績は上がりっぱなしだという。

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◆ 魔界塔19階 シェルターの世界
子どもと父親の死体だけが存在する世界。父親の手記によると、アシュラ、四天王の攻撃から逃れるために逃げ込んできたこと。残り少ない食料を父親は一切手をつけず子どもたちに与えてきたこと。神に自分の命は構わないから、子どもたちの命を救ってくれという悲痛な想いがつづられている。その想いは神には届かなかった。父親の亡骸は、最後の執念で作られた最終兵器?核弾頭を抱きかかえている。

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◆ 魔界塔20階 図書館の世界
世界がまるごと巨大な図書館になっている。そこにある書物はすべて記録。これまでの塔に挑戦してきた塔士たちの名前とその結末が克明と記されている。誰が? 一体何のために? もっとも新しい書物には主人公の名前が…。結末はまだ記されていない。

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◆ 魔界塔21階 聖剣の持ち主を待つ老人の世界
その世界にはひとりの老人が住んでいる。神より塔から現れた人間に最強の武器エクスカリバーを託す使命を与えられ、死ぬことを許されなかったという。魔界塔士にたちに聖剣を渡すと同時に、老人の体はチリと化す。

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◆ 魔界塔23階 楽園の手前、アシュラの間
塔の最上階へ向かう最後の壁として立ちはだかる大魔王アシュラ。激闘の末に勝利した瞬間、足元の階段が崩れ去り、魔界塔士たちははるか階下へと落とされてしまう。そんな彼らに話しかける謎の声――。

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◆ 真?魔界塔01~23階 激戦のメイルストリーム
まったく別の構造へと生まれ変わった魔界塔。これまでにない強敵が跋扈し、楽園への道には倒したはずの四天王、そしてアシュラが再び立ちはだかる。激戦を制し、23階の扉を開いた魔界塔士たちはエレベーターでさらに上へ。

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◆ 真?魔界塔最上階 神の世界
魔界塔士たちを拍手で迎えたのは、旅先で何度も魔界塔士たちにヒントをくれたシルクハットの男。彼は自らを「神」と名乗り、魔界塔における衝撃の真実を語り始める。


─―やっときましたね。おめでとう!このゲームを勝ち抜いたのは君たちが初めてです。

アッシュ「ゲーム?」

─―私が創った、壮大なストーリーのゲームです!

ヴァリス「どういうことだ?」

──私は平和な世界に飽き飽きしていました。そこでアシュラを呼び出したのです。

グスタフ「なに かんがえてんだ!」

─―アシュラは世界を乱し、面白くしてくれました。だが、それもつかの間のこと。彼にも退屈してきました。

マミ「そこで ゲーム??か?」

─―そう!そのとうり!!私は悪魔を打ち倒すヒーローが欲しかったのです!

アッシュ「何もかも、あんたが書いた筋書きだったわけだ」

─―なかなか理解が早い。多くの者がヒーローになれずに消えていきました。死すべき運命を背負ったちっぽけな存在が必死に生き抜いていく姿は、私さえを感動させるものがありました。私はこの感動を与えてくれた君たちにお礼がしたい!さあ、どんなのぞみでも叶えてあげましょう。

ヴァリス「お前のために、ここまで来たんじゃねえ!
     よくも俺たちをみんなをオモチャにしてくれたな!

─―それがどうかしましたか?すべては、わたしがつくった“モノ”モノなのです。

アッシュ「俺たちは モノじゃない!」

─―神にケンカをうるとは…どこまでも楽しい人たちだ!…どうしてもやるつもりですね。

   これも いきもののサガか…

よろしい!死ぬ前に神のチカラ、とくと目に焼き付けておけ!!


 それは、人間賛歌をテーマにしたRPG
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「これも いきもののサガか…」というラスボスである神の言葉は、ゲームタイトルである『サガ』の由来を指し示している。しかし、それだけではことは、ある程度の年齢を重ねると分かってくる。サガには、こんな意味合いがある。「生まれつきの性質?性格」。つまり、人間すべてに向けられているのだ。振り返ってみてほしい。『魔界塔士Sa?Ga』の冒険は、すべて“さまざまな人間と出会う旅”であったことを。

疑心暗鬼が暴走し、殺人鬼になり下がった者。
権力に固執し、腹心に裏切られる者。
大切なものに気がつき、幸せを手に入れる者。
与えられたものに満足しているだけの者。
幸せは誰かから与えられるものと信じ、日々を耐え忍ぶだけの者。
考えることを止めた者。
肉親のために命を投げ出せる者。
肉親を捨ててでもいい暮らしがしたいと願う者。
不法投棄といったエゴを平気でできる者。
社会からはみ出し者と言われても戦いつづける者。
自分の利益のために他人の不幸を笑える者。

『魔界塔士Sa?Ga』に登場する人々の生き方はゲームの中だけものではない。私たちの実生活において、すぐ近くにいる人々であり、自分自身なのだ。それも人間と肯定しつつ、同時に「それでいいのか?」と問いかけてくる。「お前は、今、ただ誰かに言われたことを何も考えずに信じ、自分では何もしようとせずに日々を耐えているだけだ。4階にいるあのキャラクターたちのように」。そんなナイフみたいらとがったメッセージを突きつけられるのだ。こんなRPGが他にあるだろうか。いや、無い!

このような観点からすると、『魔界塔士Sa?Ga』は決して子ども向けではない。大人を打ちのめすRPGが“ゲームボーイ”という名のハードから生まれたのもなんという皮肉だろうか。個人的には、ワンダースワンでリメイクされた本作を高く評価している。グラフィック、BGMともに、大幅にパワーアップしており、オススメだ。

人は誰でも幸せを探す旅人のようなもの。人生で大切なものは何か。『魔界塔士Sa?Ga』は「それはゲームではない」ということを伝える反骨精神のカタマリ、サガの名を冠するにふさわしい傑作なのである。





魔界塔士Sa?Ga魔界塔士Sa?Ga
販売元:スクウェア
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シリーズ最後のハイ?ファンタジー。二度と戻れないあの頃のFF。


2012年9月に、PSPで『ファイナルファンタジーIII』がリメイクされる。それに伴って、私は古いアルバムを取り出すようにひとつのロムカセットを発掘した。1990年に発売されたオリジナル版である。この作品には、「悠久の風伝説」という副題が付いていることをご存知だろうか?なぜ、「風」なのか。そもそもFFIIIとはどんな物語だったのか。ネット上でもあまり話題になっていない、FFIIIの“神髄”を見極める旅にみなさんを誘おうと思う。



こんにちわ、レトロゲームレイダース/ジョーンズ博士だ。

まず、みなさんに知っていただきたいのは、「『ファイナルファンタジーIII』という作品は、初期FFシリーズの最高傑作であるにも関わらず、多くの人の目に触れることが無かった不遇の作品である」ということだ。その理由は単純明快。他のシリーズ作品と違い、まったくリメイクされなかったからである。

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知る人ぞ知る、至高のファンタジー!
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ファイナルファンタジーシリーズは、決して初めから大ヒットを飛ばした作品ではない。『 I 』~『 III 』においては、玄人好みのRPGというイメージがあり、今のように「大人も、子供も、おねーさんも」というメジャータイトルではなかった。そのようなポジションを獲得するのは、スーパーファミコンにおける『 IV 』からである。

このような経緯から、まず「未プレイな方」が多いという事実がある。時は流れて、2001年。任天堂と袂を別つことになったスクウェアは、バンダイが発売する携帯ゲーム機『ワンダースワンカラー』において、“スクウェア?マスターピース”というプロジェクトを立ち上げた。これは、往年のスクウェアの名作を、ワンダースワンでリメイクしようというもの。『ロマンシング?サガ』、『半熟英雄』、『魔界塔士サガ』など、今日のスクウェアエニックスの礎を築いた名作のオンパレードである。

▼スクウェア?マスターピース▼


このとき、『 ファイナルファンタジーI 』と『 II 』もリメイクされ、『 VI 』並みのグラフィックで甦った初期作品に、私も随分興奮したものだ。発売表には『 III 』の名も記されており、事実、開発中の画面も公開されていた。にも関わらず、発売は延期され続け、途中で発表された『 IV 』のほうが先に発売されてしまう。そしてそのまま、何の情報のないまま、ワンダースワンの終焉とともにスクウェア?マスターピースも幕を下ろしてしまうのだった。

▼ 幻のWSC版FFIIIの画面 ▼
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一説には、初期FFシリーズの開発に関わっていた、流浪の天才プログラマー/ナージャ?ジベリがファミコンで再現したパフォーマンスの一部が、より性能の高いワンダースワンをしても実現できなかったとも言われている。このあたりの事実は定かではないが、開発が難航していたのは間違いないようだ。ファミコン末期、ファミコンでゲームを作ることに慣れてきたスタッフが手がけた最新作。それは、極限まで磨かれた、スクウェアの意地と努力の結晶。ハードスペックの限界まで突き詰めた至高の傑作。それが『ファイナルファンタジーIII』という作品なのだ。

私は断言しよう。ある意味において、今日まで続くFFシリーズで本作を超えるものは存在しない。まさに、初期FFシリーズが目指した「ハイ?ファンタジーのRPG」は本作で花開き、そして終わりを告げるのである。



「ファンタジーであること」にのぞんだ寺田憲史氏の挑戦。
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ハイ?ファンタジーとは?
独自の世界観や文化?風習を持つ異世界を舞台とする物語。一人の英雄が活躍するヒロイック?ファンタジーの対義語でもある。作品の傾向としては、作風が叙情的であり、超自然的な「悪」の概念と対峙する壮大な戦いをテーマとしている場合が多い。代表的な作品は、J?R?R?トールキン氏の『指輪物語』など。

今日、日本には「ファンタジー」と呼ぶ作品が数多く存在するが、その多くは日本的な解釈を多分に含んだライト?ファンタジー(ライトノベル風ファンタジー)である。本作も、独自の解釈によって、日本風のオリジナルが加えられているものの、ファンタジーというジャンルを開拓してきた先人たちに敬意を払い、ハイ?ファンタジーであることに努めた形跡が見られる。私がここで言っている「ハイ?ファンタジー」とは、作風のことだ。言い換えれば、“『指輪物語』的な要素”といえるだろうか。具体例を挙げてみよう。

 ?『指輪物語』のフロドたちのように、普通の少年たちの物語であること
 ?力の象徴であるクリスタルは、使い手によって正義にも悪にも染まること
 ?神に匹敵する力を持つ魔導師(ドーガ?ウネ?ザンデ)の存在
 ?生きている森の長老の樹
 ?小人?妖精?ドワーフといった亜人類の存在
 ?天にそびえるクリスタルタワー
 ?主人公たちに宿る力は万能ではなく、知恵と勇気が試される点
 ?「くらやみの雲」という悪の概念が敵

▼ ハイ?ファンタジーっぽいところ ▼
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『指輪物語』、『ナルニア国物語』、『ゲド戦記』、『ネバーエンディングストーリー』といった古典ファンタジー作品(ナルニアはロー?ファンタジーだ、というツッコミはなしよ)を読まれてきた方、80年代に数多く作られたPCのファンタジー系RPGをプレイしてきた方、『聖戦士ダンパイン』を観て来た方なら、このあたりの機微をご理解いただけるのではないか。

後にリリースされる本作へのオマージュである『 V 』も、原点回帰を謳った『 IX 』も、世界設定やキャラクター設定の表面をなぞった程度であり、残念ながら本作ほど洗練されたものではない。このあたりに、本作でFFシリーズと永遠に袂を別つシナリオ担当?寺田憲史氏のこだわりが強く感じられる。

私が本作を至高の一本と推す理由は、寺田憲史氏による「ストーリーテリングの妙さ」「ハイ?ファンタジーにおける曖昧な“力”の概念をうまく表現している点」。大きくはこの二点にある。



それは、光の4戦士として成長していく物語。
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本作は、孤児だった4人の少年?少女が、ちょっとした探検から風のクリスタルと出会い、世界を救う光の4戦士へと選ばれるところから、物語は始まる。クリスタルから授かった力のひとつ─―それが「ジョブチェンジ」。戦士、モンク、赤魔導師、黒魔導師、白魔導師といった古の戦士たちの能力を己のものとし、成長させていけるというものだ。

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主人公たちは最初「たまねぎ剣士」という半端者のジョブなのだが、他のジョブへとチェンジすることで格段に高い戦闘能力を持つことができる。さらに、ジョブにはそれぞれ秀でたポイントがあるのも見逃せない。海の敵に対して圧倒的な優位性を誇る「バイキング」、防御力は低いがすさまじい攻撃力を持つ「空手家」、空中戦と得意とする「竜騎士」、地形を活かした超常的な攻撃ができる「風水士」、属性を無視した召喚魔法を使いこなせる「幻術士」など。それぞれにアドバンテージがあり、どういうパーティを編成するかによって戦いにおける戦略も変わってくるのだ。まさに、ジョブの数だけドラマが広がるのである。

だが、ジョブチェンジは万能の力ではない。もちろんデメリットがあり、状況によってはまったく役に立たない。場合によっては、パーティにピンチをもたらすこともある。「この局面では、どんなジョブによるパーティ編成が打倒か」。それぞれのジョブの熟練度、装備品などを加味して、プレーヤーは最善の道を考えなければならない。そう、この力は使用者の知恵と勇気を試すのだ。

▼ これはこれで、考えられた布陣 ▼
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クリスタルから与えられた力は、ジョブチェンジだけなのだろうか。
それは違う。

なぜ、そう断言できるのか。ジョブチェンジとは「武の力(戦闘力)」。そして、武による戦いにおいて光の4戦士は異世界から現れた滅びの概念“暗闇の雲”に為すすべもなく全滅するからである。そう、力ではこの世から闇を振り払うことはできないのだ。だが、光の4戦士たちは立ち上がることができた。なぜか?

“絆”が光の4戦士を守ったからである

その絆は、辺境の街ウルからずっと続いてきた長いたびの中で育まれてきたもの。その勇気は王女サラに魔神ジンへ立ち向かわせ、その優しさはシドの大切な人を守り、その探究心はデッシュに行くべきところをさし示し、その信じる力は幼いアルス王子の王の資質を目覚めさせ、その行動は倦怠の中にあったドーガとウネを揺り動かした。少年?少女たちの足跡が、旅の中で出会った人々に希望を与え、世界中に広がった希望の数こそが、光の力なのだ。旅はただのプロセスではない。旅があったからこそ、彼らはただの少年少女から人々の希望の象徴、光の4戦士へと成長することができたのだ。

風は“伝えるもの”である。世界のすべてに行きわたり、すべてのものに平等に吹きわたる。風は立ち止まることはない。前へ前へと進む。ただ己の信じる道を、前へ前へ。それは、担い手が変わっても、決して終わることが内。ゆえに、はるか彼方よりつづいてきた。悠久の風伝説とは、そんな意味なのではないだろうか。

そして、光の世界の希望となった4人は、物語終盤においてさらなる高次元の戦い「“無”と二つの世界の生存をかけた殲滅戦」へ、闇の4戦士たちと立ち向かっていく。



FFIIIの功罪――それはあまりにも完成度の高いストーリーテリング。
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1990年、今から22年前に上記のような偉業をやってのけた『 ファイナルファンタジーIII 』。その完成度の高さゆえ、以降しばらくFFシリーズの終盤の展開は『 III 』と同じパターンがつづく

▼実は新しいことをやっていないIV ▼
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▼ザンデさまと同じことになるエクスデス ▼
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旅の中で関わってきた人々が干渉するイベント、伝説の武具の封印が解かれるイベント、ラスボスと主人公たちの意見の応酬…。しかしそれらは劣化コピーに過ぎないため、どうしても本作に比べると見劣りしてしまう(あれはあれでいい点もあるため否定するわけではない)。FFシリーズがこの呪縛から逃れられるのは『 ファイナルファンタジーX 』だ。この事実からも、本作がシリーズに影響を与え続けたか、ご理解いただけるだろう。



壮大なストーリーのダイジェスト(一部)。
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22年後のすべての「たまねぎ剣士たち」へ。
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初期のジョブである「たまねぎ剣士」。まさに、“等身大の自分”であるこのジョブは、かつてのプレーヤーたちにとってはスタートラインでしかなかった。あれから22年。大人になった当時の光の戦士たちは今、現実世界でどうしているだろうか。おそらく、多くの者たちが、「自分はヒーローにはなれなかった」と、大なり小なりの挫折を味わい、今というときを生きているのだろう。私もそんな一人だ。

ボクサーの話をしよう。理想的な選手というのは、フットワークがうまく攻撃力のある者とされている。だが、偉大と讃えられるのは、何度倒されても起き上がれる選手だ。この話を思い出すと、人生、たまねぎ剣士も悪くないと思えるのだ。最弱のジョブ?たまねぎ剣士はレベル95以上まで育てたとき、頭角を現す。そして、最強の武器?防具オニオンシリーズを身につけたとき、最高ランクのジョブへと昇華される。最強は、クリスタルから与えられた古の戦士たちの力ではなく、己の道を信じて進んだ自分自身だったのだ。

このゲームにはそんなエールが含まれている気がする。毎日に感動を無くしているすべての大人たちに問おう。「まだ、心の中に光は感じていますか?」。8ビットで描かれたフィールド?森?砂漠?山々に、広大な世界とロマンを感じていたあの頃の自分に会いたくなったら、そっとロムカセットを挿せばいい。それが、心を開くカギになるだろう。自分の心の中にある答えを探しに行く旅は、いつでも君を待っている。

名作『 ファイナルファンタジーIII 』。
その真価を知るためにも、今一度やる価値がある作品だ。

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【名作発掘】 『ファイナルファンタジーIII』 少年たちは、長き旅を通して光の4戦士へと成長していく。 『月風魔伝』を再評価してみた! 【名作発掘】 『がんばれゴエモン2』、祝!バーチャルコンソール移植!
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駆り立てるのは「歓喜」と「欲望」、横たわるのは「犬」か「豚」。





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 OgreBattleSaga Episode7
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私は、ゲームは遊ぶものと割り切っている。しかしその反面、私自身もクリエイターの端くれとしてゲームのことを敬意を表して「作品」と呼ぶことにしている。そんな私が理想とするゲームの判断基準は、“くり返して遊んでも面白いこと”。だからこそ、一度ストーリーを知ったらもういいや的な近年の大作RPG(笑)の評価が低いのはそのためだ。そのような考えの中でさまざまなゲームに触れていると、ごく稀に、すごい傑作を掘り起こしてしまうことがある。

断言しよう、『タクティクスオウガ 運命の輪』はそんな作品だ。

上記の画像はSFC版のものではあるが、このフレーズとBGM「OVERTURE」を聞いて鳥肌が立つ方は、間違いなくタクティクスオウガの世界にハマれるはずだ。あなたの期待している全てが、この作品の中には入っている。(あ、ホモは除く)。

だが、ネット上には原理主義者やアンチオウガテロリストも多い。「とにかくやっていて面白いから!」や「まーた、リメイク商法ですか」といった発言からは、この作品の真の良さは伝わらない。相当難易度が高いのだが、私は私なりに、オウガバトルサーガファンではない方々に、この作品の面白さを伝えられるようにレポートをまとめてみた。長文になるがご容赦いただきたい。


 僕にその手を汚せというのか
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1


ガルガスタンに支配された辺境の街バルマムッサ。ウォルスタ人の同胞を助けに来た主人公デニムたちを待ち受けていたのは、長い戦乱に疲れ、戦うことを放棄した同胞の姿だった。圧倒的に戦力の少ないウォルスタ陣営は一人でも多くの仲間がほしい。しかし、ここの住民たちは、武装蜂起したデニムたちこそが争いの元凶だという。どうする?ここの住人をこのままにはしておけない。かといって、無理やり連れ出しても足手まといにしかならない。悩むデニムに騎士レオナールはある提案をする。

  町の住人をひとり残らず殺す。
  そして、そのことを敵ガルガスタンの仕業と風潮する。
  そうすることで、
  島内のウォルスタ人の団結は高まり、怒りによって士気も上がる。
  一方、卑劣な行為を行なったガルガスタンは
  周辺諸国からも非難を浴び、士気も戦力もさがるだろう。

何を心に抱いているかによって「正義」は変わる。デニムが、この究極ともいえる選択においてどういう決断を下すかによって、『タクティクスオウガ』の舞台であるヴァレリア島の運命は大きく変わっていくのだった。

上記は、チャプター1の最後で問われる選択とその背景だ。『タクティスオウガ』という作品を知ってもらうために、あえて例として出させていただいた。

2


『タクティクスオウガ』は、大人の観賞に耐えうる“悲壮なる戦史”である。物語は主人公の選んだ道によってさまざまな様相を見せるのだが、そのどれもが非情な戦争のリアルを描いていく。上記において虐殺を選ぶと、心に良心の呵責を感じながら大願の成就のために新たな決意を固めるロウルート(“法”というのがなんとも皮肉!)へ。虐殺を拒否すると同胞から追われることに苦悩を感じながら自分の運命と立ち向かうカオスルート(“混沌”の名の理由はそのうち明かされる!)へ。そして、一つひとつの選択が、この戦争に関わるさまざまな人々の運命に大きく影響をしていく。そう、このサウンドノベルのような面白さは、仲間の死がストーリーにあまり多く関わってこないファイヤーエンブレムシリーズ、シャイニングフォースシリーズなどでは味わえない。

3


本作はユーゴスラビアの民族紛争をモデルにしている。単一民族国家であり、国民の愛国心の低い日本ではイマイチ「ピン」と来ないところではあるが、世界各地で民族の誇りをかけて争いは常につづいている。犠牲になるのは常に力のない民衆だ。年端もいかない女の子を捕まえてきて、民族浄化の名の下に大の大人が数人がかりで犯していく…。そんな悲惨な出来事はゲームの中だけではなく、現実に起こっているのだ。

本作の主人公であるデニムも、そんな戦争の犠牲者の一人。彼は、ふとしたことからウォルスタ人の解放のための戦いに身を投じ、攻勢の象徴として“ゴリアテの英雄”と祭り上げられる。しかし、信じていたロンウェー公爵に裏切られ、親友と道を分かつこととなり、姉と二人で戦いの中で自分の進むべき道を探していく。やがていくつもの戦いに勝利することで仲間たちが増え、島を二分する軍隊の指令にまで上り詰める。しかし、信じていた姉の失踪、明かされる自身の出生の秘密を経て、その人生は決して幸せなものとはいえない。真実は常に残酷なのだ。それでも、前に進むために、過酷な道に足を一歩踏み出す。『タクティクスオウガ』は現実に目をそむけず、立ち向かっていく青年の物語なのだ。

4



 局地戦に特化した、オウガバトルサーガ第7章
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『タクティクスオウガ』はシミュレーションRPGの中でも局地戦に特化した作品だ。そのため、地形の特性、高低さ、距離、キャラクター向きなどが重要となってくる。例をあげるならば、要塞への攻略戦。この場合、篭城する側が圧倒的優位となる。理由は、敵よりも高い位置にいるため、視界は良好、弓などの飛び道具は使い放題だし、移動も楽にでき、白兵戦になった場合でも有利な高い地形を取れる。反対に攻める側は圧倒的に不利だ。視界は不明瞭、そのため飛び道具はほぼ使えない。移動には時間がかかり、しかも道が狭いために一体ずつしか進めない。白兵戦になった際には、不利な下地形で敵に囲まれるという事態も。このような実際の攻防戦を、本作は独自のゲームエンジンH.E.R.M.I.T.(タロットカードでいう『隠者』)によって実現させた。そんな戦いを彩るのが、多彩な「クラス(職業)」と「武器」と「スキル」だ。これらを有効に使うことで、戦局は大きく変わっていく。各戦闘の特徴を掴み、有効な人員を配置することが、勝利への近道だ。

…と書くと、敷居の高いゲームに思われてしまうかもしれないがそれは誤解である。

実は、『タクティクスオウガ』の各バトルは下手でもクリアはできるのだ。そう、仲間の犠牲を顧みなければ勝つことはできる。だが、いかに犠牲を少なくするか。いかに効率よく攻略するか。といった視点をもった時、無限の選択肢が現れ、思考のシミュレーションというこのゲームの醍醐味が味わえる。

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『運命の輪』で新たに搭載されたシステムC.H.A.R.I.O.T.は初心者向けだ。これは戦闘中に起こした行動を30行動前までさかのぼってやり直せるというもの。ユニットも武器も使ってみなければ分からないことが多いため、私としてはこのシステムをガンガン使っていくことをオススメする。個人的名感想になるが、ゲーム難易度の低下よりも、できることの可能性が見つけられるという恩恵のほうが大きい気がする。

『タクティクスオウガ』はストーリー分岐があるとはいえ、ストーリーはメーカーが定めたレールの上を進むだけだ。しかし、その線上にいくつもある戦場のドラマはプレイヤーの数だけ生み出されていく。ユニオン一の邪魔者だったドラグーンがはじめてドラゴン相手に驚異的な強さを誇った時のこと、敵の動きは想定内だったがハボリムの暴走が誤算だったこと、しんがりを予想以上に務めて散っていったビーストテイマーのこと…。物語はこうしている今も無数に生まれていくのだ。

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 松野節全開な魅力的なキャラクターたちredline
『タクティクスオウガ』を語る上で、登場するキャラクターたちのことを避けては通れないだろう。その中でも注目すべきは、主人公の親友ヴァイスの存在だ。ヴァイスと主人公デニムは、港町ゴリアテに住み、同じくウォルスタ人の解放という目的のために戦っていたはずだった。しかし、戦争の中で二人はいつしか違うものを見るようになり、バルマムッサの虐殺において決別することになる。以来ヴァイスは、デニムのもうひとつの選択の可能性であるかのように立ち振る舞い、デニムと剣を交わしていくことになる。

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ヴァイスの魅力は、各ルートを経験すればするだけ見えてくる彼の素顔にある。ある時はデニムを完全に殺しにかかる暗殺者として、ある時はピンチを救うライバルとして、ある時は成長した反乱組織の指導者として…。だがそのすべてに共通しているのは、デニムへの嫉妬だ。憧れの存在であるデニムの姉カチュアの寵愛を一身に受けるデニム。自分がその場所に就きたい。でも、今の自分では絶対にそんな存在にはなれない。理想の現実の差を埋めるために、ヴァイスはデニムとは別の道を選ぶのだ。それでも結局、彼はカチュアに相手にされないままその生涯を終えてしまう。

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そんなヴァイスの人生を狂わせたカチュアは、まさに魔性というべき魅力を持つ。あまりにも目的のために竹を割ったような思考で進む彼女のキャラクター描写は、すさまじいのひと言。また、彼女は出生に大きな秘密を抱えているために、物語後半でこの戦争に大きな影響力を持つことになる。それを踏まえて、この作品のサブタイトルである「Let Us Cling Together(手を取り合って)」を見ると、いろいろな解釈ができる。くわしくは言えない。それは自分の目で確かめてほしい。しかし、SFC版が発売されてから未だに根強い人気を誇っている理由の一つがここにあるのは間違いない。

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 安心のクオリティ、オウガバトルサーガ復活の美酒に酔おう
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『タクティクスオウガ 運命の輪』をプレイして感じたのは、1995年の登場時にその完成度に驚いたSFC版も随分荒削りだったということ。15年という熟成期間を経て、『タクティクスオウガ』はさらなる高みへと到達した。システム面では、オリジナルスタッフがスクウェアに移籍後に関わった『ファイナルファンタジータクティクス』のものも踏襲しているので、そちらからプレイしたという人にもとっつきやすいだろう。グラフィックもSFC版を意識しつつまったく新しい。特に、天候の変化で変わる色合いや雫、水面の波紋といった細かな部分にも注目してほしい。

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また、今回新たに導入されたシステムW.O.R.L.D.についても言及しておきたい。これは一度体験したルートの戦闘を別ルートで育てたユニオンで体験できるというもの。そこには本来合うはずのなかったキャラクター同士の邂逅が実現し、イベントも発生する。『スーパーロボット大戦』シリーズで原作とは異なる「if」の世界を味わえるように、『運命の輪』ではよりタクティクスオウガの世界をしゃぶりつくせる仕様となっているのだ。

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それにしても15年という月日は長かった。しかし、時計の針は再び刻み始める。全8章からなる壮大なオウガバトルサーガはまだ、5章(伝説のオウガバトル)、6章(オウガバトル64)、7章(タクティクスオウガ)のみが発表され、8章(In The Lap Of The Godsは構想のみ)、3章(ベイクラントストーリーのシステムのみ)以外は闇のベールの向こうだ。一人のファンとして、続きを知りたいと思う。『タクティクスオウガ』のような作品は、壮大なシリーズの構想が許されていた古きよき時代の至宝の輝きそのものなのだ。





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『タクティクスオウガ 運命の輪』を再評価してみた!